日本映画

映画レビュー「歯まん」

2019年3月1日
セックスすると、相手を殺してしまう。恐ろしい性器を持った少女が、心から愛する男性に出会う。そこで少女がとった行動は――。

愛することは殺すこと?

冒頭シーンから、度肝を抜かれる。騎乗位で悶える少女。突然、血しぶきが上がる。何と、少女の性器が相手の男の性器を、食いちぎってしまったのだ。男は出血多量で死亡する。

呆然自失となった少女は、現場から逃走。町は、猟奇事件の噂でもちきりとなる。

少女の名は遥香。あどけない顔の女子高生だ。清純そうな外見ゆえ、彼女に容疑がかかる心配はない。

とはいえ、自分の性器が凶器だという初めて知った事実は、遥香にとってショッキングであり、とてつもない重荷でもある。

家族にも言えない秘密をかかえ、孤独な日々を送る遥香。そんな遥香に魔の手が伸びる。

彼女を見て欲情を催した八百屋の男が、言葉巧みに近づき、襲いかかったのだ。抵抗むなしく背後からレイプされる遥香。しかし、快楽を貪る男の快楽が絶頂に達した瞬間、男は悶絶して息絶える。

やや引いた距離から、カット割りせず、一気に見せる、このシーン。徹底したリアリズムに、息をのむ。

心ならずも第二の殺人を犯してしまった遥香は、死体を引きずり、森を彷徨う。すると、そこに運送業の男が現れ、遥香の死体処理を手伝う。

ここまで、遥香の受難に焦点を当ててきた物語が、この後、にわかにロマンティックな色彩を帯び始める。

遥香の顔が少女から、だんだんと女の顔へと変貌していく。馬場野々香の演技、そしてルックスが絶品だ。

フルショットが多かった画面も、終盤はクロースアップ中心へ。エロスとタナトスが一つになるエンディングは圧巻の一語である。オープニングとは対照的な遥香の悦楽の表情が素晴らしい。

『歯まん』(2015、日本)

監督:岡部哲也
出演:馬場野々香、小島祐輔、水井真希、中村無何有、宇野祥平、泉水美和子、坂井天翠、古川真司、瓜生真之助、大石結介

2019年3月2日(土)より、アップリンク渋谷他全国ロードショー。

コピーライト:©2015「歯まん」

文責:沢宮 亘理(映画ライター・映画遊民)

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