テロで壊された人生を再生する
※2018年東京国際映画祭での上映後に書いたレビューを、一部加筆した上で掲載します。
パリで暮らす青年ダヴィッドが、テロで姉のサンドリーヌを失い、遺児となったアマンダの親代わりを引き受けることになる物語だ。
“便利屋”をしながら、気ままな一人暮らしをしていたダヴィッド。突如として人生の難題に直面することに。
姉の大事な一人娘だったアマンダは、ダヴィッドにとっても可愛い姪には違いない。だが、それは、あくまで叔父と姪の関係であり、一定の距離で隔てられたものだった。
しかし、その距離は一気に縮まる。いや、縮めざるを得なくなる。何しろ、まだ7歳のアマンダが頼れるのは、ダヴィッドしかいないのだ。無責任な生き方はもう許されない。
ダヴィッドは、つい最近、引っ越してきたレナと知り合い、恋人関係になったばかりでもあった。そのレナもテロで負傷し、入院してしまう。
ダヴィッドとしては、晴天に雷鳴が轟き、突然の豪雨に見舞われたような気分だったろう。そんなダヴィッドが、いかにして難局を切り開いていくか。
映画は、大げさな感情表現を避けながら、一人の青年が困難を乗り越え、人間的に成長していく姿を、繊細に描き出していく。
アマンダと向き合うことで、自分を見つめ直し、大人の男へと成長していくダヴィッド。悲しみをこらえながら、ときにダヴィッドを励まし、勇気づけるアマンダ。
大人と子供、保護者と被保護者という関係を超え、二人は相互に力を与え合う。試行錯誤しながら、ともに前進していく姿が清々しい。
ダヴィッド役は、「いかしたガキども」(2009)や「ヒポクラテス」(2014)の若手スター、ヴァンサン・ラコスト。恋人のレナ役は、「グッバイ・ゴダール!」(2017)でアンヌ・ヴィアゼムスキーに扮したステイシー・マーティン。
そしてアマンダ役には、本作が映画初出演のイゾール・ミュルトリエ。ミカエル・アース監督によると、子供っぽさがある一方で、思考が成熟しているミュルトリエは、アマンダ役にぴったりだと思い、キャスティングしたとのこと。
内面の感情を素直に表現できるミュルトリエと、やはり自然体の演技を身上とするラコストとの相性は抜群。二人の絶妙なコンビネーションが、本作の成功に大きく与っていることは言うまでもない。
『アマンダと僕』(2018、フランス)
監督:ミカエル・アース
出演:ヴァンサン・ラコスト、イゾール・ミュルトリエ、ステイシー・マーティン
2019年6月22日(土)より、シネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMA他全国ロードショー。
公式サイト:http://www.bitters.co.jp/amanda/
コピーライト:©2018 NORD-OUEST FILMS – ARTE FRANCE CINEMA
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