外国映画

映画レビュー「欲望の翼」

2018年2月1日
「恋する惑星」「花様年華」のウォン・カーウァイ監督による青春映画の名作。香港トップスター6人が共演。

ウォン・カーウァイの最高傑作

1960年4月16日3時。サッカー場の売店で女が働いている。男がやってきて口説き始める。女は相手にしない。だが、男には“落とせる”との確信があるようだ。「夢で会おう」。キザなセリフで迫る。女は催眠術にでもかかったように、男の虜となってしまう。

男の名はヨディ(レスリー・チャン)。女はスー(マギー・チャン)。ほどなく同棲を始める二人だが、結婚願望のあるスーと、自由を求めるヨディとでは、長続きするわけもなく、あえなく破綻する。

ヨディはナイトクラブのダンサーであるミミ(カリーナ・ラウ)と知り合い、男女の仲となる。これも、ヨディからのアプローチだったが、いざ付き合い始めると、夢中になるのは女であるミミのほう。色事は好きだが、決して恋に溺れることのない、プレイボーイなのだ。

そんなヨディがある日、実の母を探しに海を渡る。突然姿を消したヨディの行方を追うミミ。そんなミミに一目惚れするヨディの親友サブ(ジャッキー・チュン)。いまだヨディを忘れられないスー。そして、スーに恋する警官のタイド(アンディ・ラウ)。急転する運命、交錯する恋。彼らが向かう先にあるものは――。

「恋する惑星」(94)、「花様年華」(2000)などで知られる巨匠ウォン・カーウァイ監督の第二作にして最高傑作「欲望の翼」。

香港映画界のトップスター6人の共演というゴージャスなキャスティングもさることながら、スタイリッシュな映像、華麗なカメラワークにうっとりさせられる。

 

斬新な構図。絶妙な焦点の移動。大胆なクローズアップ。ゴダールにクタールあり。ヴェンダースにロビー・ミュラーあり。そして、ウォン・カーウァイにクリストファー・ドイルあり。名監督と名カメラマンの化学反応が、空前の傑作を生み出した。

原題は「阿飛正傳」。魯迅の「阿Q正伝」を思わせるタイトルだが、阿飛とは不良青年を意味する俗語だそうだ。レスリー・チャンの阿飛ぶりが何とも言えずかっこいい。

ほかに、胸で呼吸しながらセクシーボディを誇示するように動き回るカリーナ・ラウ、エピローグで唐突に登場する伊達男トニー・レオン、いずれも強烈な印象を残す。

日本でのスクリーン上映は13年ぶり。ウォン・カーウァイ監督の最高傑作を、ぜひ劇場で。

欲望の翼

1990、香港

監督:ウォン・カーウァイ

出演:スリー・チャン、マギー・チャン、カリーナ・ラウ、トニー・レオン、アンディ・ラウ、ジャッキー・チュン

公式サイト:https://hark3.com/yokubou/

コピーライト:© 1990 East Asia Films Distribution Limited and eSun.com Limited. All Rights Reserved.

文責:沢宮 亘理(映画ライター・映画遊民)

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