日本映画

映画レビュー「恋は光」

2022年6月16日
恋する女性が光って見える。そんな特殊能力を持つ西条が初めて恋をした。3人の女性との恋愛論のはてに、西条が選んだ相手は?

恋は遺伝子か?戦いか?

恋する女性がキラキラ光って見える――。特殊な能力を持つ大学生の西条。だが、その光は、彼にとって煩わしいだけだった。

そんな西条が、ある日、教室に置き忘れられたノートを発見。開いてみると、そこには恋愛に関する考察がびっしり書き込まれていた。

持ち主は東雲(しののめ)という女子。「恋というものを知りたくて」、古今東西の文学書を読み漁り、そこに書かれた恋愛についての考えをノートにまとめていたのだ。

端正な敬語で喋り、浮世離れした雰囲気を持つ東雲に、西条はがぜん興味をかき立てられる。「恋なんか面倒なだけ」と冷笑していた西条が、東雲に出会ったとたん、恋にのめり込んでしまったのだ。

「すまん」とか「~してくれぬか」とか、武士のような言葉遣いをする西条は、東雲に負けず劣らず変わり者。ほとんど友人がおらず、家族もなく、古い家で一人暮らししている点も東雲と共通している。

西条の幼馴染で女友達の北代(きたしろ)は、お似合いのカップルと認めつつも、内心穏やかではない。口には出さないものの、西条に密かな思いを寄せていたのだ。

交換ノートという、何とも微笑ましい手段で交際を始める西条と東雲。二人の恋の行方に気が気でない北代。この三角関係に、他人の彼氏を見ると横取りせずにはいられない宿木(やどりぎ)という肉食女子が参入し、四角関係が形成される。

これまで恋愛とは無縁に生きてきた西条が、3人の美女の間で争奪戦のターゲットとなる意外性が興味をそそる。加えて、そのバトルの形が、単なる好き嫌いではない、観念論や認識論のゲームになっているのも面白い。

「恋とは遺伝子レベルの渇望」。「ただ会いたい、触れてみたい」。「恋とは近くて遠いもの」。「恋とは誰しもが語れるが、誰しもが正しく語れないものである」。「奪ってこそ恋。恋は戦いじゃん」。

劇中、数々の名言、警句が飛び出す。どれもが真理を突いているように思える。それらの言葉に共感し、挑発されながら、4人の意識や行動が変化していく。

キス、嘔吐、涙。不意打ち、嫉妬、諦め。心が揺れる。感情が噴き出す。さて、“色男”西条が最後に選ぶ相手とは?

青春映画の名手・小林啓一監督が、秋★枝の同名コミックを映像化。「ももいろそらを」のヒロインとも重なる個性的な主人公を中心に展開される、過激なまでに純粋なラブストーリーである。

マスクで顔出しできず、接近することも憚(はばか)られ、若い人たちの恋のチャンスが遠のいている。そんな時代だからこそ、恋の素晴しさをストレートに謳い上げた本作は眩(まばゆ)い光を放つ。

映画レビュー「恋は光」

恋は光

2021、日本

監督:小林啓一

出演:神尾楓珠、西野七瀬、平祐奈、馬場ふみか

公開情報: 2022年6月17日 金曜日 より、TOHOシネマズ 日比谷他 全国ロードショー

公式サイト:https://happinet-phantom.com/koihahikari/

コピーライト:© 秋★枝/集英社・2022 映画「恋は光」製作委員会

配給:ハピネットファントム・スタジオ/KADOKAWA

文責:沢宮 亘理(映画ライター・映画遊民)

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