外国映画

映画レビュー「マーベラス」

2022年6月30日
高度な殺人スキルで暗殺ミッションをこなすアンナとムーディ。そこに謎の男レンブラントが加わり、熾烈なバトルが繰り広げられる。

超一流たちの殺人バトル

女殺し屋のアンナと、育ての親である老暗殺者のムーディ。ともに超人的な殺人スキルを備えた殺しのプロフェッショナルだ。

二人はベトナムで出会った。アンナにとっては思い出すのもつらい過去。映画はイントロでそのエピソードを描いた後、30年後のルーマニアに飛び、成長したアンナの鮮やかな殺しっぷりを紹介する。

惚れ惚れするほど小気味よいアクション演出。メガホンを取っているのは、「007/ゴールデンアイ」(95)や「007/カジノ・ロワイヤル」(06)のマーティン・キャンベル、と聞けば納得だ。

簡単に捕らえられたと見せかけて、一瞬の隙をつき、屈強の男たちを連続秒殺。何事もなかったように、颯爽と去って行く。演じるマギーQのカッコよさと言ったらない。

サミュエル・L.ジャクソン扮するムーディによる抜け目のない援護射撃と合わせ、あっさりミッションは完了。報告と同時に振り込まれたギャラは700万ユーロ。命がけとは言え、ボロい商売だ。

二人とも普段はロンドン暮らし。アンナは希少本を扱う書店を経営し、ムーディはブルース音楽を聴いたり、お気に入りのドローンで遊んだりと、優雅な老後をエンジョイしている。

“ミッション”の時間を除けば至って平穏な日々。ただし、ムーディはガンを患っており、先がない。

そんなムーディの誕生日に、アンナは希少本ならぬ希少ギターをプレゼントする。一方、ムーディは別れのプレゼントとして、書店をアンナ名義に書き換えたと伝える。さらにムーディは、アンナにある人物の居場所を調べてほしいと頼むのだが――。

ここから物語は急転する。レンブラントという謎の紳士の訪問。何者かの襲撃。そして、ムーディの死。

殺されたムーディの敵を討つとともに、事件の真相を突き止めるため、アンナは少女時代のつらい記憶が残るベトナムへと旅立つ。

ベトナムでアンナは意外な人物と再会する。彼女の書店を訪れた紳士・レンブラント。彼はムーディが探していた男のガードマンだったのだ。

知的でエレガントな物腰の紳士が、実は自分と同じ超一流の殺人スキルの持ち主であり、自分を殺そうとしている。だが、殺されるわけにはいかない。殺すのはこっちだ。

レンブラント役のマイケル・キートンとアンア役のマギーQ。最強同士が火花を散らす、究極の殺人バトルは圧巻である。しかも、殺し合いをしている彼らの間には、なぜか男と女の感情が沸き起こり、バトルの場をベッドに移したりするのだから小癪(こしゃく)である。そんな余裕の演出も含め、007っぽいテイストが随所に見られる。

終盤の急転回に意表を突かれ、プツリと感傷を断ち切るエンディングに溜息が出る。

なお、ちょっと蛇足になるが、アンナがムーディにプレゼントするギターは「1958年製のギブソン・フライングV」で、これは劇中のセリフにもあるようにアルバート・キングが使っていた名器としてよく知られている。

アンナがムーディのUSBを差し込み入力するパスワード“BORNUNDERABADSIGN”は、アルバート・キングが67年にリリースしたアルバム名およびタイトル曲名の「BORN UNDER A BAD SIGN」(ボーン・アンダー・ア・バッド・サイン=悪い星の下で)である。クリームによるカバーバージョンでこの曲を聴いたことのある人も多いだろう。ブルース愛に彩られた作品でもある。

映画レビュー「マーベラス」

マーベラス

2021、アメリカ/イギリス

監督:マーティン・キャンベル

出演:マギー・Q、マイケル・キートン、サミュエル・L.ジャクソン

公開情報: 2022年7月1日 金曜日 より、TOHOシネマズ日比谷他 全国ロードショー

公式サイト:https://marvelous-movie.jp/#

コピーライト:© 2021 by Makac Productions, Inc.

配給:REGENTS

文責:沢宮 亘理(映画ライター・映画遊民)

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