外国映画

映画レビュー「トゥ・クール・トゥ・キル ~殺せない殺し屋~」

2023年7月6日
伝説の殺し屋に扮したポンコツ役者が、大騒動を巻き起こす。三谷幸喜の「マジックアワー」をリメイクした中国コメディの快作。

ポンコツ役者が殺し屋に

人気女優ミランと映画監督ミラー。実の姉弟でもある二人のもとに、ギャングの親分ハーベイが手下を引き連れ乗り込んでくる。

映画がヒットせず出資金が回収できないからでもあろうが、一方的に熱を上げているミランが全く自分にツレナイ態度なのが、ハーベイは我慢ならなかったのだ。

ハーベイのものになるくらいなら、殺された方がまし。そんなミランに、ハーベイは、伝説の殺し屋カールを連れてくれば命を助けると約束する。

「カールは自分の大ファンよ」。ミランは出まかせを口にし、その場を逃れた。カールは有名な殺し屋である。だが、顔は誰も知らない。ならば、誰かをカールにでっち上げてしまえばいい。ミランが目を付けたのは、撮影所で悪評の飛び交うエキストラ俳優のウェイだった。

映画の撮影だと偽り、ミランはウェイをカール役に仕立てる。初の主役に抜擢されたと思い込んだウェイは有頂天。凄腕の殺し屋になりきり、ハーベイのもとへ赴く。

映画の撮影と信じ、怖いもの知らずの大胆な行動で、ハーベイの懐に跳び込んでいくウェイ。躊躇(ためら)いや遠慮など皆無だ。ウェイのあまりに堂々たる振る舞いに、ギャングたちは気圧(けお)され、すべてがウェイのペースで進んでいく。

絶体絶命のピンチに立っても、それがピンチであることを知らないのだから強い。偶然にも助けられ、結果オーライの手柄を立て、ハーベイの信頼も厚くなる。だが一方、暴走するウェイをミランやミラーは制御できず、予想外のアクシデントに見舞われていく――。

三谷幸喜の「マジックアワー」(2008)をリメイクした中国製コメディ。売れない俳優に映画撮影と偽り殺し屋を演じさせるという大枠は踏襲しつつも、オリジナルにはないギャグをプラスしたり、セットを生かしたカメラワークでメリハリをつけたり、さまざまなアレンジを施し、リメイクを超えたオリジナルなコメディへと昇華させている。

スタッフやキャストの多くが喜劇集団・開心麻花(カイシンマーファー)に属するコメディのプロフェッショナルであるせいもあり、すべてのシーンに空振りがない。

特に主役のウェイに扮したウェイ・シャンは、これが映画初主演という、まさに役柄そのままのキャラがピタリとマッチし、ノリに乗った熱演で笑わせまくる。日本映画のリメイク作品としては歴代ナンバーワンのヒットを記録したというが、納得の出来栄えだ。

映画レビュー「トゥ・クール・トゥ・キル ~殺せない殺し屋~」

トゥ・クール・トゥ・キル ~殺せない殺し屋~

2022、中国

監督:シン・ウェンション

出演:ウェイ・シャン、マー・リー、チェン・ミンハオ、ジョウ・ダーヨン、ホァン・ツァイルン、アレン・アイ

公開情報: 2023年7月8日 土曜日 より、TOHOシネマズ シャンテ他 全国ロードショー

公式サイト:https://toocool-movie.com/

コピーライト:© New Classics Media

配給:JOYUP /ムーランプロモーション

文責:沢宮 亘理(映画ライター・映画遊民)

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