なぜ日本人はいつも同じなのか
2022年9月27日。元首相の安倍晋三が銃で撃たれ死亡した。左翼のテロか! そんな憶測も流れたが、現行犯逮捕された男性からの聴き取りで、旧統一教会絡みの私怨だと判明した。
自民党と旧統一教会。安倍の死によって初めて公にされた、衝撃のスキャンダルである。安倍の評価に関わる大問題であり、自民党にとっては致命傷になってもよい事件だった。
だが、事件の2日後に行われた参院選では、何事もなかったかのように自民党は大勝。そして岸田首相は即座に国葬を行うことに決めた。世論調査では4対6で国葬反対が多数派だったが、お構いなしに強行された。弔問外交を期待するというもっともらしい大義名分も振りかざされた。しかし、蓋を開けてみれば、G7首脳の出席はゼロ。これが世界の正直な評価だったろう。
葬儀自体もお粗末だった。16億円もの税金を投入した割に、テレビの画面からも分かるチープな演出。直前に英国で執り行われたエリザベス女王の豪華絢爛な国葬とのあまりの違いに、世界は失笑した。
そもそも“モリカケ問題”や国会でのウソ連発など、悪評高い政治家だったが、熱狂的な支持者もいた。だから、国葬当日の反応も二分されることは分かりきっていたことだ。
それが、具体的にどう割れるか、賛成と反対、それぞれどんな反応を示すのか。何を語るのか。これを沖縄から北海道まで全国10ヵ所をまわり確認したのが、本作「国葬の日」である。
沖縄での反応は苛烈だ。当たり前だ。あれだけの仕打ちを続けてきたのだ。北海道では逆に賛成派の声が拾われている。メディアが流した「外交の安倍」を信じているようだが、国葬の出欠状況を見れば本当はどうだったが分かろうというものだ。
東京では九段の献花会場に長蛇の列ができていたが、日比谷公園では反対集会。見事なバランスだ。沖縄同様、散々足蹴にされてきた福島では反対の声が聞かれた。
全体としては、賛否をはっきり主張するのではなく、「どうってことない」とか「可哀そう」とか情緒的な反応をする人が多いという印象を抱いた。国葬だろうが何だろうがどこ吹く風とばかり、黙々と皇居の周りを走る人もいる。そんな無関心層も目立つ。
どうでもよい。自分には関係ない。関与したくない。とりあえず多数派に入っていたい。同調圧力。事なかれ主義。お馴染みの日本人像は、今回の件でも、相変わらず、アップデートされることなく、健在なのであった。
国葬の日
2023、日本
監督:大島新
公開情報: 2023年9月16日 土曜日 より、ポレポレ東中野他 全国ロードショー
公式サイト:https://kokusou.jp/
コピーライト:© 「国葬の日」製作委員会
配給:東風