7月13日(土)から21日(日)までスクリーン上映、20日(土)から24日(水)まではオンライン配信されたSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2024。国際コンペティションでは、ウズベキスタン映画「日曜日」が最優秀作品賞に選ばれた。
夫婦の老境を見つめる
主人公は、ウズベキスタンの田舎の村で質素に暮らす老夫婦。決して豊かとは言えないが、二人は何ら不満もなく幸せな日々を送っている。ところが、息子のお節介によって、彼らの平穏な日常が崩されていく――。
舞台となるのは、山のふもとに建つ古い住居の中庭である。大きなベッドが置いてあり、家の外壁にはラジオが掛けられ、台の上にブラウン管式のテレビが載っている。
牛の乳搾りや織物などの仕事をこなし、空き時間に夫はベッドに寝そべって、ラジオを聴いたり、テレビを見たり。夫の指示に従ってチャンネルを回すのは妻の役目である。
電化製品などはなく、ガスコンロもマッチで火を付けるタイプ。そんな時代遅れな生活ぶりを見かねた息子から、家の建て替えを勧められるが、なかなか乗り気になれない。慣れ親しんだ今の暮らしが心地よいのだ。
だが、そんな二人の気持ちなどお構いなしに、息子は最新式のガス台、冷蔵庫、そしてデジタル式のテレビを送り込んでくる。使い方が分からない二人は、ガスも付けられず、テレビも見られない。
息子としては親孝行のつもりかもしれないが、親にとってはありがた迷惑。しつこく家の新築を勧めたり、父親の所有する車に異常な興味を示したりする様子には、下心も透けて見える。
しかし、息子の意向や行動にはそれなりの合理性があり、老夫婦が強く異を唱える余地はない。結局のところ、老夫婦は黙って受け容れるしかないのである。ある意味、それは運命であり、逆らうことはできない。
ただし、そこに嘆きや悲しみのような感情はない。彼らが歩んできた人生の価値は些(いささ)かも揺るがないのである。
ウズベキスタン出身のショキール・コリコヴ監督が、実の祖父母をモデルに、夫婦の老境を見つめた作品。淡々と生きる老夫婦の姿が、人生の何たるかを問いかけてくる。
日曜日
2023、ウズベキスタン
監督:ショキール・コリコヴ
出演:アブドゥラクモン・ユスファリエフ、ロザ・ピヤゾワ
公式サイト:https://www.skipcity-dcf.jp/
コピーライト:© Yoshlik