28年間封印されていた幻の作品
ロックンロールとサーカス!? しかもローリング・ストーンズが企画した音楽映画! ということで、製作された1968年当時、それは話題になったものだ。
ストーンズのほか、ジョン・レノン、オノ・ヨーコ、エリック・クラプトン、ザ・フーなどなど、キャストも豪華。出演者たちのスナップが音楽雑誌の表紙を飾ったりして、大いに盛り上がった。
作品はテレビ放映される予定だった。だが、どういうわけか、待てど暮らせどイギリスで放映されたという話が伝わってこない。いつのまにか噂にも上らなくなった。
完成されながら長きにわたり公開されなかったのは何故だろう。ミック・ジャガーがストーンズのパフォーマンスに満足していないとか、ザ・フーの演奏が凄すぎてストーンズが霞んでしまうとかいう噂が流れたようだが、真相は不明だ。
ようやく公開されたのは96年。今回、日本初公開されるのは、96年版の画質・音質を向上させた4Kレストア版である。
確かにザ・フーの演奏は凄い。モンタレーでジミヘンの前に登場し、ジミヘンにプレッシャーをかけた前歴を持つだけのことはある。ジャガーが青ざめても仕方がない。
マリアンヌ・フェイスフルは、ただただ美しい。チャーリー・ワッツが「ビューティフル、マリアンヌ・フェイスフル」と紹介しているとおり。
当時はまだミック・ジャガーと恋愛関係にあったが、70年に破局し、天使のような歌声は、ドスの利いたハスキーボイスへと変わってしまう。
本作では、アラン・ドロンと共演した「あの胸にもう一度」を撮り終えた後、まさに絶頂期の姿が拝めるわけで、これはもう眼福と言うしかない。
ザ・ダーティ・マックは、レノン、クラプトン、ミッチ・ミッチェル、キース・リチャード(現在はリチャーズ)が組む即席スーパーグループ。ビートルズのレノンはポール・マッカートニーと関係が悪化し始めた頃だが、この入魂の演奏にしても、茶目っ気たっぷりなジャガーとの掛け合いにしても、ノリにノッており、このショーを心から満喫しているのが一目瞭然だ。
関係の悪化といえば、ブライアン・ジョーンズはすでにストーンズから片足を出しているような状態で、ちょっと見ているのが辛いくらいだ。
それでも全曲ステージに立ち、「ノー・エクスペクテーションズ」では練達のスライドギターを聞かせる。生前最後のギタープレイ。胸に迫る“白鳥の歌”である。
今見るとさまざまことが心によぎる。ブライアンをはじめ、キース・ムーン、ジョン・レノン、ジョン・エントウィッスル、ミッチ・ミッチェル、そしてチャーリー・ワッツと、出演者の多くがあの世に旅立ってしまった。さよならだけが人生か。
「チャーリー・イズ・マイ・ダーリン2Kレストア版」も併せて公開。
ロックン・ロール・サーカス4Kレストア版
1968-1996-2019、イギリス
監督:マイケル・リンゼイ=ホッグ
出演:ザ・ローリング・ストーンズ、ジョン・レノン、エリック・クラプトン、ザ・フー、マリアンヌ・フェイスフル、オノ・ヨーコ、ジェスロ・タル、タジ・マハール
公開情報: 2022年8月5日 金曜日 より、Bunkamuraル・シネマ他 全国ロードショー
公式サイト:http://circus-charlie.onlyhearts.co.jp/
コピーライト:© 2019 ABKCO Films
配給:オンリー・ハーツ