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ポール・ニューマン特集上映

2022年10月21日
クラシック映画の名作を紹介する≪テアトル・クラシックス ACT.2 名優ポール・ニューマン特集 ~碧い瞳の反逆児~≫。

ポール・ニューマンの代表作4本

マーロン・ブランドやジェームズ・ディーンとともに、アクターズ・スタジオ仕込みのメソッド演技と持ち前の個性で、ハリウッド映画のイメージを変えた俳優、ポール・ニューマン。

「長く熱い夜」(58)、「熱いトタン屋根の猫」(58)などで脚光を浴びると、「ハスラー」(61)では独自の演技スタイルを確立。名実ともにハリウッド・スターの地位を不動のものとした。

その後、「動く標的」(66)、「暴力脱獄」(67)、「明日に向って撃て!」(69)などでさらに盛名を馳せ、「ハスラー2」(86)では初のオスカーに輝く。「ノーバディーズ・フール」(94)ではベルリン国際映画祭はじめ多数の男優賞を受賞。21世紀初頭まで第一線で活躍を続けた。

そんなポール・ニューマンの魅力が詰まった4本の作品が特集上映される。世代を超えたクラシック映画の名作を紹介する「テアトル・クラシックス」。その第2弾として「名優ポール・ニューマン特集」が開催されるのだ。

タフで反抗的、デリケートで複雑。唯一無二の個性で世界を魅了した、伝説の映画スター。その真髄に触れる絶好の機会である。

「明日に向って撃て!」

実在した無法者のブッチ・キャシディとサンダンス・キッドを主人公とした、新感覚の西部劇である。

盛りは過ぎたが、まだまだ若い者には負けられない二人。手下の挑戦を辛くも退け、列車強盗に成功する。

手強い追っ手から逃れた二人は、せしめた大金を持って、学校教師エッタの元へ。サンダンスの恋人でありながらブッチとも親しいエッタ。トリュフォーの「突然炎のごとく」(62)を思わせる自由な三角関係が爽やかだ。

3人は新天地を求めボリビアに向かうが、期待外れ。ひと暴れした後、二人はアメリカで再起を図るが――。

頭脳派のブッチをニューマン、武闘派のサンダンスを、当時はまだ無名だったロバ―ト・レッドフォードが演じている。そしてエッタには「卒業」(67)でスターになったキャサリン・ロス。

B.J.トーマスの歌う「雨にぬれても」をバックに、ニューマンとロスが自転車に二人乗りするシーンが公開当時話題になったが、今見ても素晴らしい。

木漏れ日を浴びてはじける二人の微笑み。ブッチとサンダンスが断崖絶壁から川へ飛び込むシーンとともに、忘れ難い名場面だ。

「マリアンの友だち」(64)や「モダン・ミリー」(66)の名匠ジョージ・ロイ・ヒル監督の卓越した映像センスが光る、アメリカン・ニューシネマの傑作。

「熱いトタン屋根の猫」

親友を自殺で失った悲しみを引きずり、アルコールに溺れる主人公のブリック。妻のマギーはそんなブリックを愛するが、ブリックは頑なにマギーを拒み続ける。

いったい夫婦の間に何があったのか。親友はなぜ死んだのか。ブリックの父親ビッグ・ダディの快気祝いを兼ねた誕生会を舞台に、さまざまな謎を孕(はら)みながら、物語は社会のタブーに斬り込んでいく。

テネシー・ウィリアムズのピュリッツァー賞受賞作を、「暴力教室」(55)のリチャード・ブルックス監督が映画化。ポール・ニューマンとエリザベス・テーラーの豪華共演で話題になった。

グラマラスな肢体をくねらせながらニューマン(ブリック)を誘惑するテーラー(マギー)。冷たく突き放すニューマン。この夫婦関係の何という異様さか。

舞台は1950年代アメリカ南部。異端は忌避され、否定された。ニューマンの演じたブリックは、性的な異端者であり、それがマギーとの夫婦関係に影を落としているのである。

しかし、当時のハリウッドでは露骨に描けない。オブラートに包んでそこはかとなく匂わせる。それが謎めいた空気を醸成している。やや唐突なハッピーエンドを含め、いかにもハリウッド黄金期らしい作品。ニューマンは本作の熱演でオスカー初ノミネートを果たしている。

「ハスラー」

自信に満ち溢れる若きハスラー、エディ。向かうところ敵なしの天才的プレイヤーだ。野心も満々で、15年間負け知らずという名人ミネソタ・ファッツに挑戦する。

序盤は圧倒されるが、中盤から挽回。優位に立つものの、引き時を知らないエディは、対戦中に酔いつぶれ自滅してしまう。

精神的弱さを露呈し、一敗地に塗れたエディだったが、悪いことばかりではない。停車場のカフェで知り合ったサラという女性と意気投合し、彼女と暮らし始めるのだ。

相棒のチャーリーと別れ、新たに賭博師のバートと組んだエディは、勝負師として再出発への一歩を踏み出す。しかし、これからという時に、思いがけない悲劇が起きる――。

ポール・ニューマンの表情から一挙手一投足まで、何もかもがカッコいい作品だ。キュー捌(さば)きから、タップにチョークを塗る仕草まで、すべてがクール。ニューマン以外のキャスティングは考えられない。“はまり役”とはこのことだろう。

共演者も素晴らしい。エディと熱戦を繰り広げるミネソタ・ファッツ役にジャッキー・グリーソン。賭博師バート役にジョージ・C・スコット。

そしてエディと愛し合うサラ役には、後に「キャリー」(76)でカムバックすることになるパイパー・ローリー。

50年代はトニー・カーティスなど二枚目スターの相手役ばかり務めていたローリーが、アクターズ・スタジオで演技を学び直し、絶品の演技を見せている。

ニューマンは本作の25年後に「ハスラー2」(86)にも出演。本作ではノミネート止まりだったアカデミー賞主演男優賞をついに射止めている。

「暴力脱獄」

冒頭、酒に酔った男がパーキングメーターを破壊し、刑務所送りになる。ニューマン演じる主人公のルークである。ルークは第二次世界大戦で活躍し、勲章をいくつも貰った英雄なのだが、復員後は目標を失って軌道を外れてしまったようだ。

刑務所では誰に対しても服従することなく、ボス格の大男からボコボコにされても、決して屈服しない。だが、それが逆に気に入られ、刑務所内では一目置かれる存在になる。

そんなルークは刑務所長から睨まれ、懲罰房に放り込まれる。しかし、ルークは態度を変えないどころか、隙をついて脱走してしまう。すぐに捕まるが、再び脱走。また捕まり、再度の脱走には、ボスの大男も同行するが――。

やられてもやられても、必ず立ち上がる。まさに不屈の男。反体制を体現したかのような主人公は、反逆児ポール・ニューマンにうってつけの役柄と言える。

監督は、この後「幸せはパリで」(69)や「マシンガン・パニック」(73)を撮ったスチュアート・ローゼンバーグ。職人監督が手がけた貴重なアメリカン・ニューシネマの逸品である。

明日に向って撃て!

1969、アメリカ

監督:ジョージ・ロイ・ヒル

出演:ポール・ニューマン、ロバート・レッドフォード、キャサリン・ロス

コピーライト:© 1969 Twentieth Century Fox Film Corporation

熱いトタン屋根の猫

1958、アメリカ

監督:リチャード・ブルックス

出演:エリザベス・テーラー、ポール・ニューマン、バール・アイブス

コピーライト:© 1958  WBEI

ハスラー

1961、アメリカ

監督:ロバート・ロッセン

出演:ジャッキー・グリーソン、ポール・ニューマン、ジョージ・C・スコット、パイパー・ローリー

コピーライト:© 1961 Twentieth Century Fox Film Corporation

暴力脱獄

1967、アメリカ

監督:スチュアート・ローゼンバーグ

出演:ポール・ニューマン、ジョージ・ケネディ、J・D・キャノン

コピーライト:© 1967  WBEI

公開情報:2022年10月21日 金曜日 より、シネ・リーブル池袋、新宿ピカデリー他全国ロードショー

公式サイトhttps://www.theatres-classics.com/

配給:東京テアトル

文責:沢宮 亘理(映画ライター・映画遊民)

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