外国映画

映画レビュー「ノーウェア デジタルリマスター版」

2024年11月14日
世紀末を生きる若者たちの姿を、ブラックユーモアで包みながら、不条理感たっぷりに描く異形の青春映画。意表を突く幕切れが衝撃的!

不気味でユーモラス

1990年代カリフォルニア。恋愛、セックス、ドラッグ、音楽、パーティ……。興味と欲望の赴くまま、何をしても許される。何をしても文句を言われない。そんな自由で気ままなモラトリアムを謳歌する若者たちの、とある一日を描いた映画である。

主役として登場するのは、映画を専攻する学生のダーク・スミス。メルという恋人がいるのだが、一方で美青年のモンゴメリーにも気がある。自分がバイセクシャルであることをどこまで意識しているかは不明だ。

一方、メルはバイセクシャルであることを隠そうともせず、ガールフレンドのルシファーといちゃつき放題。ダーク以外の男とも関係を持ちながら、悪びれるところが少しもない。

ほかに、バンド活動をしているカウボーイ。その恋人でバンド仲間のバート。バートにドラッグを提供しているディーラーのハンドジョブ。ワイルドなライダーのエルヴィス。エルヴィスにゾッコンなアリッサ。アリッサに夢中なダッキー。ダッキーに想いを寄せるディンバット、タッキーの姉でアイドルとデートすることになったエッグ……。

それぞれが快楽を求め、羽目を外し、衝動に身を委ねていく。いつものカップル、新しく生まれたカップル。人物相関をつかむのも大変だ。乱れた人間関係は収拾する気配もなく、先の展開は全く読めない。

ロマンティックなデートの暗転。自殺。殺人。そして、エイリアンによる誘拐! 忌まわしい出来事が、次々と、唐突に起こる。そして意表を突く幕切れへ。

「トータリー・ファックト・アップ」「ドゥーム・ジェネレーション」に続く「ティーン・アポカリプス・トリロジー(3部作)」の最終作。世紀末の不安に包まれながら生きる若者たちの姿を、ユーモアをまぶしつつ、不条理感たっぷりに描き出している。

3部作すべてに主演したジェームズ・デュバルをはじめ、キャストにも要注目である。レイチェル・トゥルー、クリスティーナ・アップルゲイト、キアラ・マストロヤンニ、ヘザー・グラハム、またグレッグ・アラキ監督は本作を“薬物依存の「ビバリーヒルズ高校白書」”と評したそうだが、同シリーズに出ていたキャスリーン・ロバートソン、そしてシャネン・ドハーティも出ているのが面白い。お見逃しなきよう。

映画レビュー「ノーウェア  デジタルリマスター版」

ノーウェア  デジタルリマスター版

1997、アメリカ/フランス

監督:グレッグ・アラキ

出演:ジェームズ・デュバル、レイチェル・トゥルー、ネイザン・ベクストン、キアラ・マストロヤンニ、デビー・マザール

公開情報: 2024年11月15日 金曜日 より、渋谷ホワイトシネクイント他 全国ロードショー

公式サイト:https://greggaraki-movie.com/

コピーライト:© 1997. all rights reserved. kill.

配給:パルコ

文責:沢宮 亘理(映画ライター・映画遊民)

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